「看護師の給料が上がらない」と感じている方は多いのではないでしょうか。
その理由のひとつが、訪問看護や介護施設など“介護分野で働く看護師の賃金水準が低いまま”になっている現状です。
2025年11月、日本看護協会(会員73万人)は厚生労働大臣へ、介護分野で働く看護職の待遇改善を求める要望書を提出しました。
介護現場の看護師の確保が難しくなり、地域の医療・介護体制が維持できなくなる可能性があるためです。
参考資料:
日本看護協会「介護分野における看護職員の処遇改善に関する要望書」(2025年11月27日 公開)
https://www.nurse.or.jp/home/assets/20251127_nl01.pdf
■ 訪問看護は病院勤務より月9.5万円も低い現実
調査によると、40代後半の平均月収では
- 病院看護師:35〜39万円台
- 訪問看護:26〜30万円台
と、約9.5万円の差が生じています。
さらに、訪問看護ステーションでは
- 基本給が低い
- 夜勤手当なども反映されにくい
といった構造的な問題もあり、賃金面ではどうしても不利になりがちです。
■ 介護施設の看護師も“賃金が伸びない”構造問題
介護施設で働く看護職も同様に、
- 賃金の伸びがもっとも低い職種
- 離職率は介護職よりも高い
というデータが出ています。
「看護師=安定して給料が高い」というイメージとは裏腹に、勤務先によって収入差が大きく広がっていることがわかります。
■ なぜ看護師の給料は上がらないのか?
(1)処遇改善加算の“対象外”
介護職の賃金を引き上げる「介護職員等処遇改善加算」。
しかし 訪問看護と居宅介護支援は対象外 のため、賃金改善がほぼ届かない状況です。
(2)医療・福祉の賃金改定率が低い
2025年の賃金改定率は
- 全産業:4.4%
- 医療・福祉:2.3%
と差が生じています。
(3)物価高騰で施設運営が圧迫
ガソリン代、電気代、人件費の上昇により、給与に回す余力を失う事業所も多いのが実情です。
■ 日本看護協会が政府に求めた“2つの改善”
日本看護協会は、次の2点を政府に要望しました。
① 補正予算による財政支援
訪問看護、小規模多機能、介護施設など、
賃金改善の原資が不足している現場への支援強化 を求めています。
② 介護報酬改定で“看護職も加算対象に”
介護職員等処遇改善加算を
看護職全体に拡大することを要望。
これが実現すれば、訪問看護や介護施設で働く看護師の給与改善に直結します。
■ 今後、看護師の給料は上がるのか?
結論としては「上がる可能性が高い」が、職場によって差が続く見込みです。
- 訪問看護:もっとも改善の可能性が高い
- 介護施設:加算拡大が実現すれば賃金改善の可能性
- 病院:中小病院では伸び悩む可能性あり
特に訪問看護は賃金が低い分、政策で優先的に改善が進む可能性があります。
■ 給料重視の看護師はどう動くべき?
- 収入を最優先 → 病院(急性期)が安定
- ワークライフバランス重視 → 訪問看護
→ 今後の処遇改善に期待でき、求人も多い - 介護施設勤務 → “処遇改善に積極的な施設”を選ぶ
→ 加算や賃金改善に取り組む施設は実際に存在します
勤務先の選び方次第で、給料も働き方も大きく変わる。
これが、今の看護師を取り巻くリアルな状況です。
